アゴラの記事が誤解を招くといけないので、ややテクニカルな補足をしておこう。銀行を無差別に救済することは事後的には望ましいが、事前のルールとしては望ましくない。これは一般的には、次のような債権者と債務者のゲームと考えることができる。

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いま債権者(銀行)が、あるプロジェクトに500億円を投資したとしよう。これが成功したら何の問題もないが、失敗して投資はすべてサンクコストになったとする。債務者(企業)を清算するとすべてゼロになるが、追い貸しして救済すると資産価値は400億円に下がってプロジェクトは続行できるとする。この場合、債権者はどうすべきだろうか?

図からも明らかなように、事後的には救済することが効率的(Pareto efficient)である。しかし事前にそれがわかっていると、債務者は過大なリスクをとり、失敗したらコストを債権者に押しつけるモラルハザードが起こる。このような効率性とインセンティブのトレードオフは普遍的な問題で、いろいろな解決法が提案されている。

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