戦略的思考の技術―ゲーム理論を実践する (中公新書)
アゴラ経済塾「合理的に考える」では、本書をテキストにして「戦略的な思考」を学ぶ。戦略というのは政治家やコンサルの好きなバズワードだが、本書の戦略はそういう飾りではなく、ゲーム理論である。というと「囚人のジレンマ」を思い浮かべる人が多いと思うが、本書には囚人のジレンマは出てこない。それは本来の意味での戦略的なゲームではないからだ。

囚人のジレンマでは、他人の行動によらずつねに裏切ることが最適な支配戦略なので、カネを借りたら踏み倒すことが合理的で、それを予想するとカネを貸さないことが唯一の均衡状態だ。これは事実に反するので、それを説明するために「繰り返しゲーム」を考えるが、同じ相手と同じ取引を永遠に繰り返すことはありえない。

本書は囚人のジレンマを使わないで、いろいろな状況に対応した戦略を考える。出てくる例は「寓話」だが、大事なことは相手がベストをつくすと考えて自分の戦略を考えることである。「憲法第9条があれば北朝鮮は攻撃してこない」というのは、戦略的な思考ではないのだ。

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