A Natural History of Human Thinking
経済学では、人間が合理的に考えるのは当然で、感情的な行動は「バイアス」だと考えるが、これは非現実的というより完全に倒錯している。感情は霊長類に普遍的にみられるが、理性は人類にしかない特殊な能力だからである。それが進化の過程でなぜ有利だったのかははっきりしないが、その一つの要因は言語による伝達を容易にしたことだろう。

猿は自分で経験したことしか記憶できないが、人間は他人に言語で経験を伝えて協力できる。動物が身振りで伝えられる内容は限られているが、人間は文法的な再帰性(recursiveness)で複雑な知識を表現できるからだ。たとえば「穴があると落ちる」という事実と「落ちると死ぬ」という事実から、「穴に落ちると死ぬ」という知識を組み立てることができる。

このように複雑な知識を互いに伝えることによって、個体としては弱い人間がグループで生き残った。つまり合理的思考そのものより、それによって協力する意図の共有が生存競争で重要だった、というのがトマセロの理論である。

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