アナキズム入門 (ちくま新書1245)
アナーキズムはプルードンの「所有は盗みだ」という思想と、クロポトキンの「相互扶助」の思想に尽きるが、いずれも荒唐無稽なものではない。プルードンの「社会的所有」の思想はマルクスに剽窃され、共産主義(国家的社会主義)に堕落した。

クロポトキンの思想はダーウィンの進化論に依拠しており、今の生物学でいうと集団淘汰の理論である。これは個体群のレベルでは正しいが、多くの中間集団が複合して「大きな社会」をつくるとき、全体を統括する国家(暴力装置)をつくらないで、ローカルな集団の協力で秩序を守れるかどうかは疑問だ。

プルードンとクロポトキンの思想は一体で、国家による所有権の保護なしで中間集団の相互扶助によって社会が維持できる、というのがアナーキズムの仮説である。こういう性善説は近代国家では内戦を誘発して悲惨な結果になるが、その唯一の例外が日本である。

「家」は相互扶助の単位だが、徳川家は全国で300の家を固定し、その中でさまざまな中間集団をつくった。明治以降もこのフラクタル構造は生き残り、意思決定はすべて中間集団で行われる。役所を超える天皇の意思は「忖度」されるだけで、究極的な決定主体としての国家はなかった。それは今も続く国家的規模のアナーキズムともいえよう。

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