確実性の終焉―時間と量子論、二つのパラドクスの解決
安倍政権は去年「未来への投資を実現する経済対策」を閣議決定したが、「過去への投資」はあるのだろうか。首相官邸のスタッフと、サンクコストを再稼動の費用に計上する反原発派の脳内には、あるのかもしれない。原発の建設工事を完全に逆転できるならすべて可変費用になり、東芝の経営危機は簡単に解決できる。

それは冗談だが、物理学では時間は逆転できる。たとえば落体の法則は、落下距離をv、重力の加速度をg、時間をtとすると、v=½gt2だが、この式はtをマイナスにしても成り立つ。ボールが落ちるビデオを逆転しても、そのボールは古典力学の法則に従っているのだ。それは量子力学でも同じで、シュレーディンガー方程式は時間について対称である。

ではなぜ日常生活では、時間は未来から過去へ流れないのだろうか。わからない、というのが物理学の標準的な答である。これは直観に反するので「時間の矢」が本質的だと考えたのが、プリゴジンの非平衡系の熱力学だが、それも古典力学の特殊な場合だった。よくある反論が「熱力学の第2法則では時間は不可逆だ」という話だが、それは違うのだ。

続きは2月20日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンでどうぞ。