昔、廣松渉のゼミで、彼が「重力はなぜ距離の2乗に反比例するのか?」という問題を出したことがある。科学哲学はみんな理系だから、ある院生が「3次元空間だからです」と即答した。すると廣松が「この教室で実測して1.99乗だったらどうするの?」と聞くと、院生は言葉に詰まってしまった。廣松は「それはガリレオがいったように、世界は数学の言葉で書かれてるからだよ」と笑った。

物理学では、法則に反する事実が見つかったら法則は「反証」される。重力がどこで計測しても1.99乗にも2.01乗にもならないのは、偶然に過ぎない。これはヒュームの問題と呼ばれる重要なパラドックスで、ポストモダン界隈では今ごろそれを解決したと称する笑い話が出ているが、これは誤りである。その答は存在しない、というのが正しい答なのだ。

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