評伝 北一輝 II - 明治国体論に抗して (中公文庫)
世界的に、リベラルの退潮が目立つ。今年は日本でも、憲法改正など保守派が巻き返すだろう。そのリーダーはもちろん安倍首相だが、彼の歴史認識のコアには、いまだに靖国神社に代表される「明治国体論」があるようにみえる。その矛盾を最初に批判したのは、岸信介が師と仰いだ北一輝だった。

一般には、北は二・二六事件を指導したファシズムの元祖だと思われているが、初期の『国体論及び純正社会主義』は教育勅語を否定し、穂積八束などの天皇大権説を「国体論の中の『天皇』は迷信の捏造による土偶にして天皇に非ず」と強く批判して発禁になった。土偶というのは、彼の表現でいえば「土人部落」である日本で国民をだます偶像のことだ。

天皇は明治政府の国体論者に利用され、万世一系なる迷信で正統化されているので、これを改めて天皇を「国家の機関」として位置づけることが、彼の革命の目的だった。それは国家社会主義というより、レーニンの社会主義に近い。1906年の段階で天皇機関説を唱えていた北が、なぜ二・二六事件で天皇を利用したクーデタを企てたのだろうか?

続きは1月16日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンでどうぞ。