キャプチャアゴラの記事はFTPLの理論を省略して結論だけ書いたので、リフレ派のようなトンデモと思われるかもしれないが、これは1991年に最初の論文が発表され、SimsやWoodfordやCochraneなどによって理論はほぼ完成している。

ただ実証的には疑問があり、2003年に内閣府のサーベイが「日・米・英・伊においては、構造プライマリー黒字[縦軸]の減少の後で、将来の実質財政余剰の割引現在価値の期待値は有意に増加することを見つけ、他の3国については無相関であった」ことから「たとえFTPLが成立しても、拡張的な財政政策は物価上昇に結びつかない」という結論を出している。

もう一つの問題は、もしSimsの提言するような「人為的インフレ税」が可能だとしても、それはコントロールできるのかということだ。FTPLでは(代表的家計が均衡を知らない場合)財政赤字の増加でインフレになると国債が暴落し、それがさらにインフレを招く…というスパイラルに入る可能性もある。こういうドルの取り付けのリスクはCochrane(2011)が警告しており、トランプ政権はその引き金を引くかもしれない。

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