丸山真男研究: その学問と時代 (植手通有集)
著者は丸山眞男のもっとも信頼した弟子で、著作集の編集や回顧談の相手をした。しかし本書は丸山論によくある権威にひれ伏すような本ではなく、具体的に恩師の限界を指摘している。ただ著者の失明など健康上の理由で未完に終わっており、研究者以外にはおすすめできない。

重要なのは、丸山のファシズム論の批判だ。彼の「無責任の体系」という規定は印象的で、その後の常識になったが、1930年代の軍部の突出した行動を「青年将校の無責任な暴走」と一括するのは正しくない。最近の研究でわかってきたのは、背後に責任ある幹部の計画があったことだ。

もちろん丸山の時代にそういう史料は利用できなかったのでやむをえないが、五・一五事件や二・二六事件も無法者の暴走ではなく、当事者としては合理的な意思決定の積み重ねとして理解できる。そう理解しなければ、戦前の歴史から正しい教訓を学ぶことができない。

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