組織の経済学
本書を私がFacebookで紹介したら、アマゾンで「経済学」の第1位になって驚いた。原著は1993年、訳本は1997年だが、いまだにビジネススクールの世界標準で、残念ながらこれをしのぐ経営学の教科書は私の知る限り出ていない。それほどむずかしくないが分厚いので、これを日本向けにアレンジしたのが拙著である。

最近は社会学者や憲法学者がバカの代名詞になったが、経営学者は昔から(経済学者の)物笑いのタネだ。本書の著者もスタンフォード・ビジネススクールの教授だが、二人とも経済学者である。数多い経営学者の書いた教科書を押しのけて本書が20年以上もスタンダードなのは、やはり経済学に「科学」としての競争があったからだろう。
経営学の教科書は、私がまじめに勉強した20年前とほとんど変わっていない。しいていえば実証データが多くなり、ゲーム理論など経済学の分析用具を使って「科学的」な装いになっていることぐらいだが、それは経済学の「いつか来た道」である。

経済学も私が学生のころまで東大経済学部はマル経が多数派で、必修科目の「経済原論」がAとBの二つあったが、ゼミに集まる人数は8対2ぐらいだった。近経の第一世代は大石泰彦などの政治的な学者だったが、彼らが宇沢弘文や根岸隆など英文の論文の多い研究者を東大に呼び戻した。

今からみると、1960年代が日本の経済学の最盛期で、そのころは数学のできる経済学者がアメリカでも少なかったので、宇沢のような数学科出身者が日本語のハンディキャップを超えて世界的スターになった。70年代には、フリードマンの影響で合理的期待が大流行したが、宇沢は「合理的期待は水際で止める」といって、東大に返さなかった。ゲーム理論も拒否した。これが日本のマクロ経済学が世界に取り残される原因になった。

今の経営学は、経済学でいうと60年代ぐらいだろう。ミルグロム=ロバーツから進歩がないのも、彼らがそれよりずっと先に行っていたからで、経営学が追いつくにはあと20年ぐらいかかるのではないか。