事例研究 日本と日本軍の失敗のメカニズム―間違いはなぜ繰り返されるのか
3・11の直後に書いた私のブログ記事が大きな反響を呼び、『失敗の本質』の売り上げは累計50万部を超えたらしいが、30年前に(単行本で)読んだときから不満があった。個々の失敗の分析は的確なのだが、そこにみられる定型的なパターンを系統的に分析する理論がないのだ。

本書は2011年の『中央公論』に掲載された論文集だが、どの作戦を見ても同じパターンが繰り返される。その第一は短期決戦の思想だ。戸高一成氏は、名将といわれる山本五十六こそ失敗の元凶だと断じる。どうやって日米戦争に勝つのかという長期計画がなく、「奇襲作戦でたたけば敵は戦意を喪失する」という希望的観測で真珠湾を攻撃し、逆にアメリカの戦意をかき立ててしまった。

第二は中間管理職が意思決定を行ない、上層部がそれを追認する下剋上だ。戦争計画は課長級の官僚と軍人の「課長打ち合わせ」で立てられ、謀略も仕組む。別宮暖朗氏によれば、1931年から3年間に起こった三月事件、十月事件、血盟団事件、五・一五事件などのクーデタ未遂事件の背後には、陸軍軍事課長の永田鉄山がいたという。

10月からのアゴラ経済塾「日本的意思決定のバイアス」では本書もテキストにして、「失敗のデパート」日本軍の行動様式を理論的に説明してみたい。続きは9月19日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンでどうぞ。