「野党」論: 何のためにあるのか (ちくま新書)
民進党が蓮舫代表になるようでは政権交代は望めないが、今の衆参で150前後という民進党の議席は55年体制の社会党とほぼ同じで、自民党を監視する抵抗型野党としてはちょうどいいサイズなのかもしれない。蓮舫氏も、国会で政府を追及するだけなら絵になるだろう。

そもそも何のために政権交代するのだろうか。かつてのように与党が資本主義で野党が社会主義なら、そういう「革命的変化」も必要だが、今はそういう大きな違いはない。日本には英米のような階級対立もないので、「穏健な多党制」が望ましいという意見もある。かつての自民党は、一党支配のもとで派閥による擬似政権交代をしていた。

もともと小選挙区制は、自民党が両院の2/3をとるために何度も国会に出したが、野党の抵抗で実現しなかった。それを90年代に「政権交代を可能にする」という理由で実現したのだが、結果的には自民独裁になり、ポピュリズムが強まった。

本書は世界各国の事例を踏まえて野党のあり方を考えているが、英米のような政権交代型野党は、むしろ少数派だ。日本のように同じ党が一貫してが圧倒的多数という国も少ないが、ヨーロッパの多くの国はその中間だ。日本にはドイツのように、自民党の一部と民進党右派の大連立で政治を変える方式が向いているのかもしれない。

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