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JBpressの記事がいろいろ反響を呼んでいるようだが、リニア単体では採算がとれないことはJR東海の社長も認めている。問題はそれ以前に、リニア新幹線が必要なのかということだ。9兆円もカネがあるなら、JRグループには満員電車を解消してほしい。

今回の都知事選でも、小池百合子氏が「満員電車ゼロ」を公約に掲げたが、この8年前の本の帯にも推薦文を書いている。本書には満員電車をなくすための具体的な政策が書かれている。「2階建て通勤電車」には批判もあるようだが、信号システムの効率化やピークロード料金など、他にも手段はある。

高度成長期には新幹線のような大プロジェクトに意味があった。東海道新幹線や東名高速の投資リターン(ROI)は、当時のどんな民間投資より高かった。しかし人口減少時代に必要なのは、身近な移動のインフラだ。ところが経産省に乗っ取られた安倍政権は、いつまでたっても産業政策の発想が抜けない。小池氏が都知事になったら、こういう古い発想を東京から変えてほしい。
イノベーションの可能性は大きい

満員電車の最大の原因は、電車の間隔が長すぎることだ。これは本書によれば、信号システムに問題があり、列車の位置を鉄道の中だけで確認しているので、列車と列車の間を1km以上あけているので、ラッシュアワーでも2分以上は間隔があく。高速道路で時速100kmで走っていても、車間距離を1kmもあけることはないだろう。

これは現在の信号システムが、昔の性能の悪かった電車を基準にしているからで、今ならこの半分ぐらいの間隔で運行できる、と著者はいう。もちろんそのためには信号システムも変える必要があり、GPSなどを使って列車位置を正確に把握して速度を自動調整する必要があるが、技術的にはむずかしくない。

すぐできるのは、料金体系の変更だ。ピーク時の料金を上げるピークロード料金を導入して時差出勤のインセンティブを与えるとか、座席に座れる切符を割高で売るとか、今の均一料金をやめて多様化すべきだ。

もっと根本的な問題は、通勤路線への投資不足だ。この原因は、鉄道料金が新しい路線への設備投資をほとんど勘案しないで抑制されていることで、他方で整備新幹線やリニア新幹線には財投で資金援助している。これから人口減少と都市集中の時代には、新幹線なんかいらない。むしろ都市の交通インフラを整備すべきだ。イノベーションの余地は多いので、ぜひ小池知事に実行してほしい。