今さら聞けない経済教室―こどもに聞かれても困らない60の疑問と答え
池田信夫『今さら聞けない経済教室』が本日(4月29日)発売されました。Kindle版も、同時発売です。

はじめに

安倍政権で一時的によくなったようにみえた日本経済は、2016年に入って雲行きがあやしくなってきました。中国株の暴落に始まって円高が進み、日本銀行がそれに対応して「マイナス金利」を実施したところ株価が暴落し、アベノミクスも転換を迫られています。

…といったニュースを聞いても、どういう出来事が起こっているのか、またなぜ起こるのか、わかる人は少ないと思います。経済の世界は専門用語が多く、また金利や為替といったなじみのない数字がたくさん出てくるからです。円高だとなぜ困るのでしょうか? 金利がマイナスになるってどういうことなんでしょうか? アベノミクスって何ですか?
じつは、こういうニュースを理解するぐらいの予備知識は、中学の『公民』の教科書を読めば書いてありますが、ほとんどの大人は忘れているでしょう。また経済は激しく変化するので、学校で習った知識もすぐ役に立たなくなります。この本では、こうした日本経済の出来事を理解するための常識を、こどもに語りかけるつもりで書いてみました。
 
日本経済には、いろいろな問題があります。2008年に「リーマン・ショック」と呼ばれる大変な金融危機があって、日本もそこからようやく立ち直ってきたのですが、2012年末に安倍首相になってから「アベノミクス」と呼ばれる経済政策が始まりましたが、混乱はかえって深まっています。
 
日本のお年寄りは急激に増える一方、こどもがあまり産まれなくなったので、日本の人口は減り始めています。とくに働く人が減っているので、所得も伸びません。そんな中で、安倍さんは「日銀がお札を印刷すれば、インフレになって景気もよくなる」といって、実際にお札は2倍以上に増えたのですが、景気はよくならず、物価は下がっています。
 
こどもの世代のみなさんにとってもっと大きな問題は、政府の借金が1100兆円を超え、世界最大になったのに、政府がこれを減らそうとしないことです。毎年、国債は50兆円ぐらい発行されていますが、これは借金ですから、いずれ返さなければなりません。それはいま政府から年金をもらっているお年寄りではなく、こどもの世代が負担するのです。
 
しかし、こどもには選挙権がないので「1000兆円以上も借金を返すのはいやだ」ということもできません。消費税がいまの2倍とか3倍になるころには、いまのお年寄りは死んでいるでしょう。この本は、たんにこども向けに書いただけではなく、そういう将来世代の立場から日本経済を考えるものです。

アベノミクスという経済学の常識に反する「社会実験」がはっきり失敗したことは、この本に書いたような標準的な経済学が役に立つことを示したと思います。

目次
contents