ゆうべの「朝まで生テレビ」は震災5周年で、また原発の特集だったが、初歩的なリスクの概念を理解していない人がいまだに多い。小林よしのり氏が「原発のリスクは最大だ」というので、私が「それは1回の被害(ハザード)の最大値。リスクは被害×確率で考えるので、原発のリスクは石炭火力よりはるかに小さい」というと、ポカーンとしていた。

bb69bac4-s

これは何度も見せたWHOによる発電量あたりの死亡率(人/TWh)という確率的なリスクである。原発による死亡事故は、過去50年間に1回だけだが、石炭火力は、毎年数十万人の死者を出している。WHOによれば、中国だけで毎年36万人が石炭で死んでいる。

ところが多くの出演者が「そういう安全性の計算は納得できない。いくら確率が小さくても、いったん起こったら大災害になる原発は安心できない」という。心理的な安心は計算できないが、しいていえば(確率とは無関係に)被害の最大値を最小化するということだろう。

これは必ずしも不合理な考え方ではなく、意思決定理論でいうMinMax原理(最大の損失を最小化する)と考えることができる。進化の過程で、人間はこうした危険回避型のバイアスを身につけてきた。たとえば「飛行機は落ちると怖い」といって船で海外旅行するのは個人の自由で、それによって彼が「安心」を得るならそれでいい。

しかし社会全体が極端に危険回避的になり、飛行機が1機落ちたらすべての飛行機の運航を差し止めるに等しい大津地裁のような決定をすると、大きな経済的損失が出る。

続きは3月14日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンでどうぞ。