新版 テロルの現象学――観念批判論序説
山本義隆氏の『私の1960年代』が全共闘運動の敗北宣言だとすれば、本書はその勝利宣言だ。1984年に書かれた本論は陳腐化しているが、2012年に書かれた長文の補論は「68年に始まった大衆蜂起の時代はようやく開幕したばかりだ」と結ばれる。

といっても著者は、レーニン的な社会主義革命を夢見ているわけではない。彼の論拠は、ウォーラーステインの「1968年が近代世界システムの終わりだ」という規定である。

「長い16世紀」にヨーロッパから始まったグローバル資本主義は、その後の500年で全世界を支配下に置く世界=経済を構築した。その過程で彼らが行なった戦争や植民地支配は不問に付され、第1次大戦で世界の再分割が終了した後の武力による現状変更が「侵略」とされた。国際連盟も国連も「先進国クラブ」の既得権を守る体制である。

これに対してベトナムを初めとする「第三世界」が反抗し、それに先進国の反戦運動が呼応したのが1968年だった。戦争の中心は1980年代以降は中東に移り、2001年の9・11以降はイスラム原理主義の近代世界システムへの挑戦が始まり、今それは難民問題としてヨーロッパをゆるがしている。

他方、中国やロシアなどが世界=帝国を再構築しようという動きも強まっている。近代世界システムがそう簡単に崩壊するとは思えないが、世界=経済の安定していた時代が終わろうとしていることは事実だろう。

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