緊縮策という病:「危険な思想」の歴史
ちょっと前までアカデミズムの世界でケインズ理論は死んだと思われていたが、最近はKrugmanを初めとして、バラマキ財政を肯定する「原始ケインズ主義」が復活している。そういう流行の走りが本書だ。

理論的には何ら新しさはなく、昔の教科書の45度線みたいな話だ。違うのは、ケインズ政策がスタグフレーションをもたらすというマネタリストの批判が、EUのようなデフレ状態では当てはまらないという話だ。Krugmanの主張もほぼ同じで、彼もリフレはとっくに捨てている。

Martin Wolfも長期停滞の原因として人口減少や投資の減退(新興国への資本逃避)をあげ、EU(特にドイツ)が財政規律を過剰に重視するのは有害だと論じている。世界的にゼロ金利に近い状態で、財政赤字が膨張しても金利が上がる心配はないというのだ。

彼らに共通しているのは、金融政策の有効性を否定して財政政策を推奨し、長期停滞に入った局面では財政規律を守る必要はないという主張だ。民間が投資しないのだから、政府が投資すればいい――これはEUでは意味のある政策提言だが、日本には当てはまらない。

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