安保法案はドタバタの末、今夜0時から参議院本会議が開かれ、可決・成立の予定だ。そもそも今回の法案は、国会の争点になるようなものではなかった。軍事同盟の加盟国が互いを支援することは世界の常識であり、NATOでは義務である。それに比べれば多くの制約がついている今回の法案が「戦争法案」だというなら、NATO諸国はみんな「戦争国家」なのか。
こんな常識的な法案がこれほどの騒ぎになったのは、自民党の戦術ミスもあるが、野党が統一戦線を組めるのが憲法問題しかないという事情が大きい。これが60年安保で「革新勢力」の得た教訓だった。普通は国民が外交問題に関心を示すことはないが、1960年5月19日の「強行採決」で、広範なメディアも知識人も「民主主義を守れ」という点で一致し、全国で100万人規模の大衆行動が起こり、岸内閣を退陣に追い込んだ。

これが成功体験となって、社会党は右派を追い出して社共共闘に傾斜し、70年代には「革新自治体」で勝利を収めた。しかし国政選挙では社会党の議席は高度成長と反比例するように減り、90年代に消滅した。彼らの避難場所になった民主党も、2009年に308議席という「突然変異」を記録した以外は、社会党とほとんど変わらない「1/4政党」である。「国民の過半数が安保法案に反対だ」というが、安倍内閣の支持率は、図のように上がった(NHK調べ)。

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この原因は、野党がいまだに60安保の「何でも反対」を脱却できないためだと思う。50年代までは、朝鮮戦争もあって「日本が戦争に巻き込まれる」という左翼の主張がリアリティをもっていたが、60年以降の高度成長で、国民の関心は激増する富の分配に集中した。国民を豊かにしたのは労働組合の賃上げ闘争ではなく、資本主義だったのだ。

しかし成長率が頭打ちになった今、問題は負担の分配である。派手なプロレス興行の終わったあと、安倍政権の2期目に待っているのは、財政再建と社会保障改革という安保より政治的に不人気な課題である。安倍首相は、安保法案に正面から取り組んだ指導力で、今度こそ日本の本当の問題に取り組んでほしい。