服従
ピケティの次にフランスで話題を呼んでいるのが、この本だ。内容は2022年のフランス大統領選挙で、ムスリム同胞団系のイスラム政党のムハンマド・ベン・アベス党首が大統領に当選し、イスラム教育を義務化するなど、フランスのイスラム化を進める――という近未来小説である。

原題"Soumission"は「服従」という意味だが、イスラムという言葉にも「神への絶対服従」という意味がある。今年の1月7日、奇しくもシャルリ・エブド事件の日に発売されて爆発的なベストセラーになり、英訳も先週出た(日本語訳も今週出た)。

もちろんイスラム人口が10%にすぎないフランスでイスラム政権が成立する可能性は今はないが、イスラム系の出生率はフランス人の数倍で、都市に集中しているので、今後、難民受け入れでさらにイスラム系が増えると、シャルリ・エブド事件のような「文明の衝突」が増えるだろう。

ムスリムは、フランス革命以来のライシテ(政教分離)の原則を否定する。政教分離はキリスト教徒が宗教戦争をやめるための休戦協定であり、イスラムはそういう不純な妥協はしない。正しい政治はイスラムの正しい教えと不可分であり、それを世界に広めることがムスリムの聖なる義務だ――と彼らは考えているからだ。

このようにイスラムは、西洋のグローバル資本主義を超える徹底したグローバリズムであり、すでに破綻した主権国家システムに代わって世界を統一する原理だ、とイスラムの理論家は考えている。この闘いは、まだ始まったばかりだ。

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