再発見 日本の哲学 廣松渉――近代の超克 (講談社学術文庫)
戦後を振り返るとき、日本のオリジナルな思想家としてほとんどの人が共通にあげるのが、丸山眞男と廣松渉である。そのうち私は廣松に直接学ぶ幸運に恵まれたが、彼についてのいい入門書はいまだにない。本書は彼の生涯をたどった伝記に近く、その思想内容にはあまり深く立ち入っていないが、ここでも最後に丸山との対比が出てくる。

たしかに両者は、互いに参照することはなかったが、似た面がある。それはヘーゲルやマルクスなどのドイツ的な普遍主義の強い影響を受ける一方、日本人の特殊性に関心をもち、「日本の哲学」を構築しようとしたことだ。それは廣松の『<近代の超克>論』に顕著にあらわれている。

『資本論の哲学』は、デリダの『マルクスの亡霊たち』より20年も早く価値の「亡霊性」を指摘していたが、デリダが「マルクスは最後は労働価値説という実在論に戻ってしまう」と突き放すのに対して、廣松はマルクスの実在論を救おうと試みる。それは成功していないのだが、最近のポストモダン以降の新しい実在論に通じる面もある。

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