きょうはEconomist誌主催のジャパン・サミットで、安倍首相のスピーチを聞いた。これをソーシャルメディアで紹介するのが招待の条件なので、取り急ぎ印象を書いておこう。

表情はリラックスした感じで、マスコミが安保法案ばかり騒いで経済問題を書かないのは「ニュースがないのはいいニュース」で、批判できないからだと、経済運営に自信を見せた。企業収益が上がり、株価も上がっているので、これが好循環となって経済全体に行き渡るだろうというが、30分のスピーチで金融政策には一度も言及しなかった。
その点を司会者(Economist誌のアジア・エディター)に「日銀とのハネムーンは終わったのか?」と突かれると、「黒田総裁を信頼している」としか答えなかった。むしろ「日本経済は供給制約に直面している」と強調し、規制改革に重点を置いていた。しかし具体策は農業分野ぐらいしかなく、労働市場については「女性の活用」と答えるにとどまった。

安保政策については、岸信介が政権を賭して安保条約を改正したことを引き合いに出し、「祖父は50年たったらわかってもらえるといっていた」と語ったのが印象的だった。司会者の「安保法案で国会運営が行き詰まったら衆議院を解散するのか?」という質問には、「ありません」と笑って答えた。

今までは一定のインパクトがあったアベノミクスも、材料がつきた印象だ。首相はもっぱら供給制約を強調していたが、規制改革や成長戦略でできることは限られている。むしろ財政や社会保障に山のように仕事があるのに、彼は無関心のようにみえた。先日出た骨太方針では、遠からず金利上昇は避けられない。日銀とのコミュニケーションは大丈夫なのだろうか。

第2セッションに出た伊藤元重氏も、骨太方針を自画自賛していた。最近は竹中平蔵氏に代わって彼が政権のブレーンになったようだが、まさか3%の成長率が実現できると思っているわけではあるまい。第3セッションに至っては、再生可能エネルギー推進派ばかり集まって「再エネを30%以上にして原発を止めろ」といった話をして、聞くに耐えなかった。