吉田茂とその時代(上) (中公文庫)
夏の合宿では戦後史を見直すとともに、未来の日本を考えたい。普通なら70年もたてば歴史の評価は定まっているが、日本にはいまだに古い歴史観にこだわる人々が(左右ともに)残っているので、それを清算するにはいい機会だろう。

本書は吉田茂をめぐる英文資料から、占領統治の実態を明らかにしている。特におもしろいのは、1950年代に朝鮮戦争が起こっている最中に、憲法改正と再軍備を求めるアメリカの強い要請を、なぜ吉田が拒否したかだ。日米交渉の担当者だったコワルスキ米軍大佐は次のように回想している。
「どうも理解できないが」と私は切り出した。「われわれが兵器装備[米軍基地]の大きな費用を負担しようという気になっているときに、なぜ首相は貴国の防衛兵力の増強を拒否するのですか?」

私の友人[首相の側近]は答えた。「兵力は増強しますが、1955年まではしません。それは、吉田さんが日本を朝鮮戦争に巻き込ませたくないからです。[…]吉田さんは、日本軍が中国の泥沼にはまりこんだことを思い出すたびに身震いするのです」。(下巻 pp.150~51、強調は引用者)
「思い出すたびに身震いする」という言葉に、実感がこもっている。当時はまだ戦争の記憶が国民にも鮮やかに残っていた。吉田も朝鮮戦争に「巻き込まれる」ことを恐れて再軍備しなかったのだが、戦争が終われば憲法を改正するつもりだった。しかしその計画は、さまざまな誤算で頓挫してしまう…

続きは7月5日配信の池田信夫ブログマガジンでどうぞ。