冨山和彦氏の本で印象的なのは、JALの資産査定を厳格にやったら、2500億円の債務超過だったというエピソードだ。おまけに運行に必要なキャッシュフローが1000億円以上も不足しており、そのまま放置すると2ヶ月以内に飛行機が止まる状態だった。

こんな「ゾンビ状態」でも、飛行機は普通に飛んでいた。もちろん乗務員はこういう財務状態は知らないが、経営陣もメインバンクも知らなかった。各部門がバラバラに経営され、労働組合が8つもあって、経営者に会社全体が見えない状態になっていたのだ。

こういう日本の会社は珍しくない。JBpressで紹介したNOTTVも、最初からだめだとわかっていたのに、ドコモの社長は「5年後に5000万台」という事業計画を語った(3年たっても175万台)。文系オヤジには技術がわからないので、現場のつくったパワーポイントを読み上げていたのだ。

よく日本の会社は、現場は優秀なのに経営者がバカ殿だといわれるが、そうではない。現場が実質的な権限を守るために、経営者に情報を上げないのだ。このように現場がボトムアップで意思決定を行なって上層部を無力化する構造は、天皇制や幕藩体制から日本軍まで続く日本型デモクラシーだ、と丸山眞男は論じた。

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