国際秩序(上) (日経ビジネス人文庫 )
ウクライナでもパレスチナでも、冷戦後の世界秩序が崩れ、不均衡に向かっているようにみえる。本書は古代ローマから現代までの「世界秩序」を語る壮大な歴史だが、それを貫くのは、キッシンジャーのリアリズムだ。その原則は次の3つである。
  1. 国際政治は理想や善意ではなく力の均衡で決まる。
  2. ウェストファリア的な国家主権は戦争の抑止力にはならない。
  3. 国際機関も頼りにならないので各国が相互不干渉の原則を守るしかない。
1928年の不戦条約で「正しい戦争」という概念は廃止されたはずだったが、その後も世界大戦は起こり、冷戦は続き、国連は国際連盟と同じく無力である。こうした国際的アナーキーの中で、アメリカが中東などで「世界の警察」の役割を果たしてきたが、その結果はさらなる混乱だった。もう「アメリカの正義」を世界に売り込むのもやめるべきだという。

そして次のアナーキーの原因となりそうなのは、アジアである。それを防ぐ上でキッシンジャーが高く評価しているのは日本だ。中国はウェストファリア的な秩序に挑戦し、アメリカと太平洋を分割しようとしている。これに対して日本は欧米と価値観を共有できるアジアで唯一の国として、その地政学的な重要性は高まっている。

続きは月日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで(初月無料)