十字架と三色旗――近代フランスにおける政教分離 (岩波現代文庫)
昨年のシャルリ・エブド事件のとき驚いたのは、テロそのものより直後の大規模な抗議デモだった。マンガ雑誌の事件に対して、わずか4日後に、EU各国首脳を先頭にしてフランス全土で370万人ものデモ行進が行なわれたのには違和感を覚えた。

日本のマスコミは「さすが表現の自由を重んじる近代市民革命の祖国だ」などと感心していたが、これはお門違いである。本書の「文庫版エピローグ」には、その背景が解説されている。

キーワードはライシテである。日本語には対応する言葉がないが、「世俗主義」などと訳される。これはフランス革命の掲げた思想で、それはカトリック教会が国家まで支配する社会から個人を自由にする脱宗教革命だった。

このとき印象的なのは、民衆の襲撃の対象になったのが告解所だったとことである。これも日本人には理解できないだろうが、フーコーが指摘したように、告解こそ教会が個人の内面まで支配する権力装置だった。そこでつくられた<個人>とは、絶対的な神に従う者=主体(subject)だったのだ。

その後もカトリック教会と共和主義者の戦いは100年以上にわたって続き、1905年に政教分離法で和解した。しかし今フランスやヨーロッパを脅かしているのは、全欧で5500万人といわれるイスラム教徒による新たな宗教戦争である。

続きは6月14日(日)に配信する池田信夫ブログマガジンでどうぞ。