東京地裁は16日、上杉隆の事件の判決で、双方に50万円の支払いを命じ、私にブログ記事の削除を命じた。主文は以下の通り。
  1. 被告池田及びアゴラは、原告に対し、連帯して50万円を払え。
  2. 被告池田は、インターネット上のウェブサイト「ライブドアブログ」中の「池田信夫blog」に掲載された別紙掲載記事目録の各記事を削除せよ。
  3. 被告アゴラは、インターネット上のウェブサイト「アゴラ」に掲載された別紙掲載記事目録の各記事を削除せよ。
  4. 原告上杉は、被告池田に対し、50万円を支払え。(以下略)
これは上杉の名誉毀損訴訟と私の反訴について同時に判決を出したものだが、私は控訴するので賠償も削除もしない。上杉が控訴しない場合は反訴の判決は確定するので、上杉が私に50万円を支払うことになる(彼はMXの番組で、すでに事実誤認を認めた)。

本訴の判決には、重大な事実誤認がある。判決理由の19ページには、こう書かれている。
原告メルマガでは、情報の出所は「D氏」と表示されていたのであって、原告一覧表が他の情報の複製である可能性を除外するためには、そのような情報提供者の存否を確認することが不可欠であったというべきであり、これをせずに、論理的に極めて低い確率であるとの理由で原告一覧表が他の情報の複製である可能性を除外したとしても、被告池田が本件記事1の作成掲載に当たり本件摘示事実を真実であると信じたことにつき、相当の理由があるということはできない。
これは誤りである。「D氏」こと出口晴三が上杉に出したメールの時刻は、2011年3月19日の11時5分であり、読売の記事が公開されたのは同じ日の8時17分だから、読売が出口の情報を複製する確率はゼロである。こんなことは自明だが、私は念のため読売新聞に問い合わせ、「自社の記事だ」という確認を取った。ところが判決は、こう書いている。
読売新聞社の読者向け窓口に電話して、読売一覧表が同社の取材によるものであるとの回答を得ているものの、同社編集部に対する取材は行なわず、原告に対しても直接に事実関係の説明を行なわずに本件記事2及び本件記事3の作成掲載をしている。
これは事実誤認である。「読売新聞社編集部」などという部署は存在しない。私は反対尋問で「読者センターから折り返し電話があり、出稿部に問い合わせた結果、すべて自社の取材だとの回答を得た」と述べたのだが、この業界用語が裁判官にはわからなかったようだ。

出稿部というのは原稿を出す部のことで、3月19日の記事には海外特派員からの情報も入れたので、社会部と外報部のチームで書いたとのことだった。したがって読売と出口が同一のリストを複製することもありえない。読売の特派員が出口(あるいは他の人物)に情報を提供するはずがないからだ。

ところが裁判官は、謎の第三者が読売と出口に同一の情報を提供した可能性もあると思ったようだ。そんな可能性を考えたら、何でもありうる。出口のメールが読売の記事と偶然一致する確率だってゼロではない(判決はこれを混同している)。さすがに上杉もそうは主張しなかったのだが、裁判官はそういう可能性もあると考えたようだ。

ついでにテクニカルな欠陥を指摘しておくと、本訴の判決は原告の請求していない記事の削除を命じているので、違法である。こんな間違いだらけの判決が確定すると、ネット上の言論にも悪影響を及ぼすので、控訴する。