「財政が破綻して国債がデフォルトする」とか「ハイパーインフレが起こる」という話がよくあるが、たぶん現実はそれほど劇的ではないだろう。今週の言論アリーナで亀井善太郎さん・小黒一正さんと議論したように、日本の政府債務をチャラにする方法は、金利の抑制とインフレによる金融抑圧しかない。
これは歴史的には、それほど珍しいことではない。ReinhartのNBER論文はそれを詳細に分析している。GDPの2倍を超える政府債務を削減するには課税しかないが、消費税でも所得税でも足りない。政治的にもっとも安全な方法は、インフレ税である。大英帝国の場合は、戦後のどさくさにまぎれて金利を3%程度に規制し、インフレを放置することで大幅なマイナス金利を実現した。

Reinhartのデータで驚くのは、どこの国も同じ方法で政府債務を減らしたことだ。オーストラリアやイタリアのほうが露骨な金融抑圧で政府債務を減らした。終戦直後には、先進国の国債の実質金利は-15%になった。いわば政府が、インフレで債務を清算したのだ。

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日本も終戦直後に、400%以上のインフレで政府債務をパーにした。おもしろいのは、このときも国債そのものはすべて返済したことだ。先進国では、中南米のような債務不履行は起こらなかった。その代わり日本の場合は、最大90%の「財産税」をかけて財産を没収した。

今の日本の政府債務は平時としては世界史上最大だが、長期金利は世界史上最低である。この史上最大のバブルはいずれ「平均回帰」するが、どういう形でそれが崩壊するかはわからない。安倍首相は増税という方法がありえないことを示したので、残る方法はインフレで借金を踏み倒す金融抑圧しかない。それが黒田日銀のやっていることである。