日銀政策委員の宮尾龍蔵氏の講演が話題になっている。彼は10月31日の決定会合で追加緩和に賛成して5対4にした。3票は総裁・副総裁だったので、彼と白井さゆり氏がキャスティング・ボートを握っていた。2人とも大学の研究者なので、どういう学問的判断をしたのかが注目されたが、会見ではこういう問答があった。
(記者)追加緩和に踏み切った10月31日の決定会合の2週間前にこれほど強気な見通しを示しております。今日の懇談会の中では180 度違うことをおっしゃっているわけです。この2週間で何が急にそれほど見通しが変わったのか、見方が変わったのか教えて下さい。

(宮尾)やはり一時的とはいえ、原油価格の下落の影響というのがあります。先程、ドバイ原油の価格の言及がありましたけれども、10月初めがおそらく90ドルくらい、元々7月頃が100ドル前後であったと思いますけれども、10月初めで10%くらい下がった後、10月半ばに85ドル、10月末には80ドルと10月ひと月でもさらに10%下がるということで、私が10月初めの段階で思っていた以上に原油価格の下落のスピードが早かったというのが1つあります。

(記者)繰り返しになりますけれども、10月18日の講演をされた時点で10月16日のドバイ原油は81.79ドル/バレルでした。この 81.79 ドル/バレルは10月31日の会合が行われた当日の83.24ドル/バレルより安かったのです。講演を行った時点では原油については一言も触れられていません。講演のときには、全く感じていなかったリスクを2週間後には突然感じたということでしょうか。

(宮尾)…
宮尾氏は原油価格なんか知らなかったのだが、31日の決定会合で「原油価格が下がったから追加緩和する」という奇妙な方針に賛成する言い訳をあわててさがしたのだろう。彼も経済学者なのだから、日銀が国債を買っても原油価格の下落を止めることができないことぐらい知っているはずだ。

結果的には円安になって、一時は原油価格が円ベースで上がったが、それも今は74ドルまで暴落しているので、コアCPIが1%を切るのは時間の問題だ。原油価格を上げるには、日銀が原油を買い占めるしかない。

キャプチャ
原油価格(横軸の「03.07」は7月3日)

彼も認めたように、昨年以来のデフレ脱却の最大の原因はエネルギー価格の上昇であり、最近の下落も原油価格の低下が原因である。日銀の金融政策はデフレ脱却には何の役にも立たないので、追加緩和にも意味がない。それは資産価格には一時的に影響を与えるが、CPIを上げる効果はない。これもここ1年半の経験でわかったことだ。

宮尾氏のように学問的良心を捨てて「翼賛」する御用学者が、かつての戦争のときにも日本の道を誤らせたのだ。彼も白井氏も、学問的名声を大事にしたほうがいい。