きのうの記事がやや荒っぽかったので、ちょっと補足。非常に細かいことなので、在日問題の関係者以外は読む必要がない。
私が「韓国籍か日本国籍を選ぶことができた」と書いたのは日韓条約以降のことで、それまでは在日は「朝鮮籍」という変則的な状態だった。これ自体は韓国とも北朝鮮とも国交がない時期にはやむをえないことで、問題は終戦後に国籍が「一方的に剥奪」されたのかということだ。

1951年の新聞記事によれば「在日朝鮮人の国籍問題に関する日韓会談は、国籍、永住権、日本における待遇、引揚げの際携行する荷物と本国送金などの点に就いて原則的に意見の一致」を見、「終戦前から日本に引続き在留する朝鮮人は対日講和条約発効と同時に日本国籍を失う」ことなどで韓国政府と日本政府は合意している。

これは当時の外交文書からも確認されている。むしろ韓国側の要請で在日は国籍を喪失したので、「選択の自由」がなかったのは当然だ。この点は黒田氏と市川氏も議論しているが、市川氏が「独立と引き換えに突然はしごを外すみたいな原状回復をした」と批判するのに対して、黒田氏は「それは当時の韓国側の希望だった」と反論している。

在日が一挙に国籍を喪失したことは、大きな混乱をもたらした。韓国政府は当事者にこの合意事項を知らせていなかったので、彼らが「剥奪された」と思い込むのも無理はない。しかし黒田氏もいうように「日本が敗戦国で、しかも戦犯国家と国際社会で断罪されている状況」で、国籍選択というのは考えられなかった。あとになって日本のほうが住みやすいということで、日本国籍をよこせという話になったのだ。

「帰化」という言葉が差別的だという話もそのころ出てきたが、国籍を取得する手続きは韓国人もアメリカ人も同じだ。むしろ韓国人は優先的に帰化させたが、帰化すること自体に抵抗があり、「本来は日本人だったのに強制的に国籍を奪われた」という神話ができた。彼らがそう信じたい気持ちはわかるが、これも「強制」神話の一つである。