歴史問題に争いはないので、残るのは請求権だけだ。これについて日韓条約で韓国は請求権を放棄したが、法的には日本政府が任意に個人補償することは可能である。それが2012年3月に外務省の佐々江次官が韓国政府に提示した「佐々江案」だ。中央日報によると、その内容は次のようなものだった。
  1. 日本の首相が公式謝罪をし
  2. 慰安婦被害者に人道主義名目の賠償をし
  3. 駐韓日本大使が慰安婦被害者を訪問して首相の謝罪文を読み、賠償金を渡す
同紙によると「韓国政府は、佐々江3項目のうち第2項の人道主義的な賠償を受諾できなかった。交渉の末に日本が人道主義的賠償を謝罪金と名称を変えて、さらに専門家らが慰安婦問題の真相を究明して後世の教育に反映するという項目まで追加する案を作って妥結直前まで行った。しかし今回は日本の野田首相が突っぱねた」という。ところが野田氏はブログでこう書いている。
[2011年]12月、京都で開催された日韓首脳会談では、李大統領は時間の大半を費やしていわゆる従軍慰安婦問題の解決を求めてきました。私は、1965年の日韓請求権協定によって法的には完全に決着しているという立場を貫き、彼の要求に応じませんでした。この時の厳しいやり取りが、翌年8月の李大統領による竹島上陸という常軌を逸した行動の伏線となり、日韓関係の急速な悪化につながったと思います。
ここで彼は「翌年8月」の李大統領の行動の前に、佐々江案をめぐる交渉があり、「人道主義による賠償」を彼が了承したことにふれていない。最終的に彼が拒否したとはいえ、外務省が「つかみ金」を払うつもりであることは今も変わっていない。東郷和彦氏は、その別働隊だろう。

韓国側は「安倍内閣が継承すべきだ」といっているが、菅官房長官は「前政権の交渉は関知しない」とつっぱねている。来年の日韓条約50周年に向けて、韓国がこの話を蒸し返すおそれが強いが、少しでも譲歩すると、世界から「日本政府は性奴隷を認めた」といわれ、山のような国家賠償訴訟が起こるだろう。それで得するのは、福島みずほなどのハゲタカ弁護士だけだ。