きのうの言論アリーナでも話したことだが、朝日新聞の「慰安婦問題の本質、直視を」という記事は、なかなか味わい深い。特におもしろいのは、次の部分だ。
一部の論壇やネット上には、慰安婦問題は朝日新聞の捏造だといういわれなき批判が起きています。しかも、元慰安婦の記事を書いた元朝日新聞記者が名指しで中傷される事態になっています。読者の皆様からは「本当か」「なぜ反論しない」と問い合わせが寄せられるようになりました。慰安婦問題が朝日新聞のブランドイメージを失墜させ、植村隆元記者がネトウヨの標的になって再就職もパーになった(大学が採用を撤回した)。これ以上放置すると部数が落ち、まともな社員が入ってこなくなるという危機感があったのだろう。今年5月のOB会でも、批判があったらしい。
特に「捏造」というのは意図的に嘘の話をつくったという意味だから、報道機関としては致命傷だ。この特集では、そこにこだわって「挺身隊」は植村氏の善意のミスだったと主張している。しかし産経の阿比留記者も指摘するように、植村氏の記事は矛盾している。
「元慰安婦 初の証言」は、元朝日記者の植村隆氏(今年3月退社)が3年8月11日付朝刊で書いた「元朝鮮人従軍慰安婦 戦後半世紀重い口開く」という記事を指す。韓国メディアより先に、初めて韓国人元慰安婦の証言を伝えたもので、これも「母に40円でキーセンに売られた」と別のインタビューなどで語っている金学順氏について「女子挺身隊の名で戦場に連行」と記している。この「挺身隊」の記事の前に植村氏は「キーセンに売られた」という話を本人から聞いている。それがなぜ「戦場に連行」になったのか。朝日が言い訳するように、挺身隊については「研究が進んでいなかったため同一視」したとしても、植村氏は民間の人身売買だと聞いたのに官憲による連行と書いている。このように事実を知った上で嘘を書くことを捏造というのではないか。
ところが朝日新聞は「捏造はなかった」と主張し、それを根拠にいくつかの週刊誌に抗議文を送っている。どうやら捏造を論点にして反撃に転じようという作戦らしいが、上のように朝日の検証にもとづいても植村氏の記事は捏造である。強制連行がなければ、商行為としての慰安婦は問題にならなかったので、「慰安婦問題」は朝日の捏造である。
自民党の石破幹事長が「国会招致」に言及したのも、植村氏を念頭に置いていると思われる。一般論としては国会が報道機関を喚問するのは好ましくないが、報道の自由には嘘をつく自由は含まれない。まして今回の場合、その嘘を朝日新聞が20年以上も訂正しないで「枝葉の問題だ」と開き直った(それは今回の特集も同じ)ことが、日韓問題を大混乱に陥れたのだから、外務委員会に植村氏を呼んで、この矛盾を追及すべきだ。



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