6月の鉱工業生産指数が前月比-3.3%という大幅な落ち込みを見せた。次の図のように、今年の初めから下がり続け、半年で7ポイント以上も落ちている。これは東日本大震災以来だ。また今年1~6月期の貿易赤字も約7.6兆円と半期として史上最大で、石油危機のときより大きい。人手不足なのに、実質賃金は前年比-3.8%だ。

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鉱工業生産指数(2010年=100)

マクロ的にみても、潜在成長率はほぼゼロに下がり、GDPギャップもゼロに近い。これは経済が均衡状態に近づいたという点では悪くないのだが、需要が増えたのではなく、供給制約でギャップが縮まったのだ。今までは需要も供給も低かったのでそれなりに安定していたのが、皮肉なことにアベノミクスで需要を刺激したために供給制約が顕在化したものと思われる。

この最大の要因は人口減少だ。特に生産年齢人口は団塊世代の引退で急速に減っており、年率-1%近い。もう一つは、ニューズウィークにも書いたエネルギー価格だ。これはもともと原油価格が2.5倍になった時期に原発をすべて止めてLNGを10兆円以上も余分に輸入し、さらに円安誘導で輸入額を25%も増やした「自国窮乏化政策」の影響が大きい。

これから来るのは、マイルドなスタグフレーションだろう。日経ビジネスの調査によれば、このまま原発を止め続けると、企業向け電気料金は震災前に比べて北海道電力61.5%、東京電力57.9%、関西電力57.8%も上がる。


企業向け電気料金の予想(日経ビジネス)


これは従来型の需要不足による不況ではないので、公共事業では是正できない。すでに建設現場は、人手不足で土木工事もできない状況だ。もちろん追加緩和でも、どうにもならない。これは支持率の低下してきた安倍内閣にとっても危険信号だ。まず緊急に必要なのは、原発を動かしてエネルギー制約を緩和することである。