週刊 東洋経済 2014年 7/26号 「『21世紀の資本論』が問う 中間層への警告/人手不足の正体」
今週の週刊東洋経済はピケティ特集。これに寄稿した私の記事にも書いたが、「日本は平等社会だから関係ない」と思うのは大きな間違い。インタビューでピケティもいうように、日本こそ典型的な不平等社会だ。OECDの調べによれば、日本の労働分配率は主要国でもっとも低い。

これは「デフレ」のせいではなく、新興国(特に中国)との賃金のアービトラージュの影響が大きいので、インフレ目標なんか設定しても意味がない。むしろ「デフレ脱却」したら実質賃金が下がり、格差はさらに拡大する――私を含めて多くの経済学者がそう警告したが、その予想どおりアベノミクスで実質賃金は年率3%以上低下し、消費支出が激減した。

キャプチャ

それなのに不平等感が強くないのは、資本所得による高額所得者が少なく、アメリカのような億万長者が目立たないからだ。これは企業が収益を株主に配当しないで貯蓄しているからで、この特集でもいうように「みんな仲よく貧しくなっている」。

もう一つの格差の原因は、ピケティもいうように人口減少だ。こういう状況では社会保障のゆがみが大きくなるばかりでなく、相続の影響が大きくなる。以前に言論アリーナで鈴木亘氏も提案したように相続税の課税ベースを広げるなど、資産課税の強化が必要だ。

このように個人が貧しくなる一方で会社が貯蓄し、経済が停滞する構造をどうすべきなのか。夏の合宿では、こういう問題も議論したい。