大飯3・4号機の運転を差し止める福井地裁の判決は、現実的な影響は何もない。いま原発は止まっており、運転を差し止める権限は裁判所にはないからだ。原子炉等規制法第43条の3の23にもとづいて停止命令を出せるのは、原子力規制委員会だけである。炉規制法で安全基準を定めており、停止を命令できるのはそれに違反する場合だけだ。裁判所が「人格権」を根拠に差し止め命令を出しても、法的拘束力はない。
最大の争点は大飯の700ガルという基準地震動の想定が妥当かどうかだったが、それを超える地震が来ると判決が断定した根拠は「全国で20箇所にも満たない原発のうち4つの原発に5回にわたり想定した地震動を超える地震が平成17年以後10年足らずの問に到来している」という一般論しかない。これは大きな間違いである。

基準地震動を超える地震が来た5回のうち、地震で破壊された原発は1基もない。福島第一は基準地震動をはるかに超える大震災でも、緊急停止したのだ。事故の原因は、津波による予備電源の浸水である。したがって今回、福島と同様の事故が起こるかどうかの判断は、同じような津波に耐えるかどうかが基準だ。この点についてはすでに安全対策が施されており、判決も問題にしていない。

判決は「大飯原発には1260ガルを超える地震は来ないとの確実な科学的根拠に基づく想定は本来的に不可能である」というが、もちろん不可能である。そんな巨大地震が来たら、福井市が全壊して裁判官が死ぬ可能性もゼロではない。そんな論理的可能性を心配していたら、日本中どこにも人は住めない。だから現実的なリスクを安全基準で定めているのだ。田舎の裁判所が、勝手に安全基準を変えることはできない。

これまでにもこの種の判決はたまにあったが、最高裁で確定するまで関電には判決に従う義務がない。そして最高裁では100%原告が負けており、今度も負けることは確実だ。今回のような幼稚な判決では、名古屋高裁でもくつがえるだろう。