きのうの記事の補足。まず注意が必要なのは、潜在成長率やGDPギャップというのは、直接みえる数字ではなく、いろいろなデータをもとにして特定のモデルで推定したもので、その手法によって大きな差が出るということだ。日銀の展望レポートでは足元の需給ギャップ(GDPギャップ)を「ほぼゼロ」としているが、内閣府は-1.6%と推定している。ここでは日銀の数字をもとに考えよう。

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上の図のように、現状で需給ギャップはほぼゼロなので、日銀は「潜在成長率を超える成長が続く」と予想している。これはインフレになるということだ。それを示しているのが現在の人手不足である。つまり物価だけをみれば、黒田総裁の予想が当たる可能性がある。問題はそれが望ましいのかということだ。

次の図のように、日銀の指標とするコアCPIでみると、需給ギャップがゼロのときは物価上昇率は1%ぐらいで、2%のインフレ率に対応するのは3%以上の超過需要(供給不足)になる場合で、80年代後半のバブル期と同じだ。

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ただ今回は消費増税という特殊要因があるので、4~6月期は需要が落ち込むだろう。だから今年のなかばぐらいまでは「異次元緩和」を続けても大きな問題は起こらないと思われるが、後半以降も「コアCPIで2%」を目標に量的緩和を続けると、供給不足で物価と金利が跳ね上がるおそれがある。

もともと竹中平蔵氏などは「需給ギャップがなくなるまで緩和すべきだ」と主張していた。需給ギャップがゼロの状態をヴィクセル的な自然水準(定常状態)と考えると、そこに到達するまでは多少は無理な金融政策をとっても、定常状態で経済は安定するはずなので、この主張は理論的には成り立つ。しかし彼の理論によっても、すでに(日銀の推計では)GDPギャップはなくなったので、量的緩和を続ける根拠がない。これ以上、無意味な緩和を続けると経済が定常状態からはずれて危険だ。

もともとインフレ目標というのは「2年で達成する」というターゲットではなく、緩和の限度を示しているだけだ。それより低いインフレ率で需給ギャップがなくなったのだから、浜田宏一氏もいうように、「物価をどうして2%にしなければいけないのか、全く分からない。1.5%だっていい」のである。インフレ目標を激しく主張した彼が今さらこんなことをいうのは無責任だが、君子過ちは改めるに如かずだ。