21日の記事で紹介したように、岩田規久男氏の理論によれば、BEI(予想インフレ率の代理変数)は、当座預金残高が80兆円を超えた現在は5.7%に上昇しているはずだが、実際には1.3%に低下している。この反証について彼がどう答えるか興味をもっていたが、ロイターに対する答はこうだった。
(ロイター)物価安定目標達成のカギを握る予想インフレ率の動向をどうみるか。

(岩田)BEIは調整過程にあるが、次第に戻ってくると思う。インフレ率は、民間アンケートなどでは以前は下がるという見通しだったものが、上がるという予想に変わってきている。効果は次第に浸透してくる。
BEIは彼の予測の1/4以下になり、しかも異次元緩和の開始後の5月以来、1ヶ月以上ずっと下落を続けているのに「調整過程」とは恐れ入る。実は岩田氏は、2年前にも次のような予測をしている。

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彼の理論によれば、マネタリーベース(MB)を157.3兆円にすれば2%のインフレが実現するはずだった。しかし現在すでにMB残高は160兆円だが、4月のコアCPIは-0.4%だ。これが「調整」によって2%に上昇することは、およそ考えられない。このように自分に都合の悪い反証はすべて「調整」でごまかすリフレ派の理論は、ポパーの基準によれば科学ではなく宗教である。

以上のデータからいえることは、マネタリーベースや当座預金の残高は物価とも予想インフレ率とも無関係だということである。浜田宏一氏もいうように、間違っていた場合は少なくとも「公の場で誤りを認める」ことが研究者の倫理だが、日銀副総裁としてはそれではすまない。岩田氏は「予想インフレ率が2%に到達しないような場合を考えている」そうだが、2年後に2%にならなければ辞任するという国会での約束は忘れたのだろうか。