帝国主義論 (光文社古典新訳文庫)7月からのアゴラ読書塾では「グローバル資本主義」をテーマにするが、この関連で本書を(学生時代以来ひさしぶりに)読んでみた。骨格はヒルファーディングの『金融資本論』のパクリなのだが、意外に現代にも通じる面がある。今週のメルマガから一部、引用しておこう。
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モラルハザードは、普通は情報の非対称性で起こるとされていますが、本質的にはペイオフの非対称性が原因です。タレブの言葉でいえば、ペイオフが巨大銀行のようにふだんはもうかるが破綻したら政府が助けてくれるという凹関数になっていると、テールリスクを取ることが合理的になってしまうのです。

このリターンとコストの非対称性は、金融規制では解決できない普遍的な問題です。たとえば法的根拠もなく全国の原発を止めると、反原発派の得るリターンはわかりやすいが、年間3.8兆円のコストは全国民が広く薄く負担するので、わかりにくい。このようなただ乗りを防ぐために、人類の遺伝子にはの感情が埋め込まれていると考えられます。

つまり他人のコストにただ乗りすることが合理的なので、非合理的な恥という感情でブレーキをかけているのです。たとえば、あなたが無人の店先で商品を持ち去ることは合理的な行動ですが、見つかったら恥ずかしいという感情がそれを制止するでしょう。こういう恥によるブレーキは、ゲーム理論でいうreputation mechanismですが、メンバーが一定の小集団でしか機能しません。

そこで不特定多数の出会う社会では、法律によって処罰するしくみができたわけですが、法律にも非対称性があります。たとえば殺人犯を死刑にしても、被害者が生き返るわけではないので、事後的には処罰しないことが合理的(パレート効率的)です。しかし殺人が罰せられないということがわかると犯罪が増えるので、事後的には不合理な刑罰を科すのです。

つまり主権国家の秩序を守っている法律は、特定の国家権力で強制しないと維持できない不合理なルールなので、そのすきまをぬえば逃れることができます。最近ではアップルの「脱税」が問題になっていますが、法人税が最低の国で納税することは合理的行動であり、法人税という制度が不合理なのです。

こうした非対称性を利用してもうけることが資本主義の本質なので、それはあらゆる非対称性を求めて世界に広がります。商業資本主義から産業資本主義へ、そして金融資本主義から「情報資本主義」へ・・・と技術的に高度化するとともに、アジア・アフリカなどの地理的なフロンティアも搾取しようとしています。それがネグリ=ハートのいう<帝国>です。

これは、かつてレーニンが『帝国主義論』で指弾した植民地支配の洗練された形態です。そこには暴力的支配はなく、先進国に搾取(exploit)される途上国は、技術移転によって開発(exploit)され、1日1ドルだった収入が10ドルぐらいになるかもしれない。しかし先進国の単純労働者の収入は1日10ドルに限りなく引き寄せられる・・・

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