堀潤氏の立ち上げた8ビットニュースというウェブサイトに、反原発デマが投稿されて問題になっている。それについて私がコメントしたら本人から反論が来たが、何か勘違いしているのではないか。

彼がNHKをやめた遠因は、福島第一原発事故の直後に、ツイッターで危険情報を個人的に発信したことだったらしい。彼は自分では「政府寄りのNHKの中で果敢に真実を語った」と思っているのかもしれないが、実際の現場は逆だ。「原発が爆発して*人死んだ」という類の噂はたくさん流れてくるので、他社に先んじてリポートしようとはやる記者を抑えるのがデスクの役目である。

災害報道の基本は勇み足をしないということだ。小さな被害が大きくなるのはしょうがないが、逆になると視聴者は何を信じていいかわからなくなるので、確認された情報だけを出して噂を流さない。この結果、メディア全体でみるとNHKの報道が保守的に見えることは避けられない。

それが堀氏には不満だったのかもしれないが、災害の修羅場でNHKの公式アカウントで未確認情報を出すのはルール違反だ。彼がいまだにこだわっているSPEEDIも単なる風向予測装置であり、原子力規制委員会も認めたように、事故直後には停電で放射性物質の放出量データがなかったので、仮のデータを入れて計算した無意味な情報だった。

今となっては、歴史的事実はほぼ明らかだ。WHOなどの公式の調査でも、今回の原発事故で死者が出ることは考えられない。結果的には、慎重なNHKが相対的には一番いい報道をしたと思う。ICRPについての捏造番組もあったが、「プロメテウスの罠」などで大量のデマを流した朝日新聞に比べればましだ。

むしろ今回の事故報道の反省は、過剰な危険情報が人々に恐怖感を植えつけ、民主党政権が原発を違法に止めるなど、エネルギー政策が大きく脱線したことだ。今後のNHKの役割は、正確なデータと科学的な解説で恐怖をやわらげ、エネルギー政策を正常化させることだ。いまだに危険デマを流している堀氏のウェブサイトは有害無益である。