どうやらシャープに続いて、パナソニックも危なくなってきたようだ。ルネサスも「日の丸ファンド」で救済されたが、これは新たな悲劇の始まりである。今週のメルマガから引用しておこう。

半導体大手のルネサスエレクトロニクスが、産業革新機構とトヨタ自動車やパナソニックなど国内企業8社から1500億円の増資を受けることが決まりました。そのうち革新機構が1383億円を引き受ける、事実上の「国有化」です。

今春にルネサスの資金繰りが急に悪化したとき、大株主の日立製作所、三菱電機、NECに支援を要請しましたが、3社は増資を断りました。このためメインバンクの仲介で、米系ファンドKKRが1000億円の出資をする話が進みました。

ところが自動車用マイコンの発注者であるトヨタなどが「中国企業に事業売却されるのではないか」とか「足元を見て価格を大幅に引き上げるのではないか」などとしてKKRへの売却に難色を示し、これを受けて革新機構が「救済」に乗り出しました。

しかしこれは利益相反です。顧客にとっては半導体を安く買うことが望ましいが、それは株主の利益に反します。株主としてのトヨタが顧客の立場を優先して今までのように赤字受注を続けさせると、ルネサスの企業としての存続は困難になるでしょう。

KKRは、世界のprivate equityの中ではトップのファンドです。もしKKRが買収していれば、事業部門ごとの収益をモニターして低収益率の部門から売却し、他に代替できない半導体の価格は上げるでしょう。それがいやならルネサスとの取引をやめて汎用品を使えばいいし、必要なら買収して子会社にすればいい。それが資本主義です。

ところが日本では、こうした問題を長期的関係で解決します。つまり一度でも裏切った相手とは取引を打ち切り、二度と取引をしないという脅しによって関係を続けるのです。このためには、コテコテにカスタマイズして関係を打ち切られた場合の損害を大きくすることがコミットメントになります。

しかしこれはルネサスのように弱い立場になると、発注元のメーカーに搾取されるリスクが大きい。J-CASTに紹介されている大手機械メーカーのトップの言葉はいい指摘をしています。
あなたたちはいつまで下請けをやろうとするんですか。うちの社員があれも作ってくれ、これも作ってくれと言っているかもしれない。でも、なぜ「こちらには標準的なこのマイコンしかないから、このマイコンでお宅の製品を作ってくれ」と言えないんですか。
これが日本の下請けメーカーの大きな問題です。部品を標準化して大量生産するという決断ができず、顧客のいいなりに細かくカスタマイズしてしまう。そうすると他に販路がなく、価格は力関係で決まるから、景気のいいときは高い値段で全量買ってくれるが、業績が悪化すると値切られやすい。


あとの理論的な分析はメルマガにゆずるが、こういう「オールジャパン」の無責任体制で延命することは最悪だ。ルネサスが生き残るためには不採算部門を切り、採算部門の収益を上げるしかないのに、顧客がそれをさせないために出資するのだから、何をかいわんやである。こういう先送りを続けていても、エルピーダのように最終的には破綻する。今のうちなら部分的に切除できる病巣が全身に回ると、本当の死に至る。

ルネサスは、KKRに資本主義を教えてもらう絶好のチャンスを逃した。2006年には検察がライブドアや村上ファンドをつぶして資本主義の芽を摘んだが、今回の官民による救済劇はそれにも匹敵する失敗である。もう日本に残された時間はあまりないというのに・・・