昔の記事でも書いたことだが、バカにも程度があって、リフレ派はましなほうだ。それより愚劣なのは自民党の「国土強靱化」に代表されるバラマキ派で、その教祖が三橋貴明氏である。彼の話は徹頭徹尾でたらめなので論評する気にもならないが、安倍総裁がFacebookで「いいね!」をつけているというので放置できない。
三橋氏の記事はほとんど読んでいないが、最近の「法人税減税を考える」という記事を読んだだけで、そのあほらしさは一目瞭然だ。彼は「法人税減税でデフレが深刻化する」と主張するのである。その理由は「企業収益が上がったら供給能力が増えてデフレギャップが拡大するから」。こういう誤解はよくあるので、逆を考えてみよう。

供給を増やすとデフレになるなら、それを脱却するのは簡単である。供給を減らせばいいのだ。植田和男氏もいうように「財を大量に購入して廃棄するということを続ければ、デフレは止まる。中央銀行が政府の代わりに公共投資を大量に実施しても同じである。あるいは大量に株式を購入し、株主としてその企業に設備投資を命じることも考えられる」。

もっと簡単なのはデノミだ。日銀が1ドル=100円にペッグした新円を発行すれば、確実にインフレ・円安にできる。日銀券をすべて電子マネーにすれば、いくらでも物価は操作できる。本石町氏の提案は、所得政策で政府が「10%価格を上げろ」という規制をするとか、CPIを過大に報告する。三橋氏の例でいえば、法人税を100%にすれば、日本から企業はなくなって供給は激減するから、すごいインフレになるだろう。

要するに、インフレにするだけなら簡単で、インフレ目標なんてまどろっこしいことをする必要はないのだ。いいかえると、デフレそのものは有害でも有益でもない。問題は所得の減少や失業などの実体経済の損害なので、企業収益が上がったらデフレになるから企業収益を下げろという話は本末転倒だ。

これは理論的にいうと、三橋氏が潜在GDPという概念を理解していないためだが、まぁそんなことを言っても彼にはわからないだろう。安倍氏にはこの記事もわからないかもしれないが、せめて側近の人々にわかってほしいのは、三橋氏の話はすべて嘘だということである。