周波数オークション問題では、川端総務相は電波官僚のロボットであることがわかった。こんな状態では、政治家が「政治主導」で官僚をコントロールするという西洋型の政治システムは機能しない。これについて先日の記事に元官僚からおもしろいコメントをもらった。
「関係業界のコンセンサスが官僚の正当性の根拠」に付言すると、「関係業界」とは関係の政治家・マスコミ等を含めた「関係業界」であり、それが「国民のコンセンサス」をとりまとめることと同義だったということを理解していただく必要があります。ある特定の政策についてそうした国民のコンセンサスを整えるのは官僚の仕事だったし、政治家はそのような仕事を引き受けていたわけではありませんでした。
憲法の原則では、主権者たる国民の意思は選挙によって国会議員に反映され、彼らのつくった法律を行政官が執行することになっている。つまり

A. 有権者→国会(立法)→官僚(執行)

ところが日本では、国会議員が立法機能をもっていないため、官僚が審議会や懇談会などの形で国民(実際には既存業者)の意思を法律に反映する。政治家は官僚のつくった法律を追認し、自分の地元に利益を分配するだけだ。

B. 審議会→官僚(立法)→国会(利益分配)

建て前上のAルートでは官僚が自分で政策を決めるのではなく、審議会に諮問して答申を受けて決めることになっているが、実際のBルートでは、総務省情報流通行政局の大橋秀行総務課長のいうように、
審議会に対して諮問し答申をいただきますけれども、これは私どもの評価を審議会にお諮りして答申をいただくということでありますから、要するに評価は私どもの方でいたします。われわれは当然のことでありますけれどもプロフェッショナルな立ち位置に立ち、それだけのスタッフを持ちしっかりした評価というものをさせていただく・・・
「プロフェッショナルな立ち位置」で検討して選ばれたはずのmmbiの13チャンネルを使うのは、なんとmmbiだけ。13部屋の賃貸マンションを売り出したら、誰も借りなくて大家が全部借りたようなものだ。このNOTTVなる「マルチメディア放送」でドコモの浪費する資本は500億円以上とみられるが、彼らにとってはそれぐらい安いものだ。本当の目的は、700MHz帯の周波数をもらうために電波部に貸しをつくることだからである。

このように審議会は官僚の決めた結論を正当化するだけなので、今のように役所が人選しているかぎり時間の無駄である。アメリカの審議会は、これとは違って反対派も入れて長時間にわたって議論する。一般の傍聴も自由で、私もFCCの審議会を見たことがあるが、Vチップの問題ではGNUのヒッピー風の若者が「VチップでGNU radioができなくなる!」と強く批判し、Vチップはつぶされた。

実際に国民の意思を反映するのが審議会だとすれば、その人選を民主党がやれば官僚の意思決定を早い段階でコントロールできるだろう。それをパブリックコメントで(ツイッターなどを活用して)国民審査すればいい。将来は審議会の委員を公選制にすれば、Bルートを通じて国民の意思がもっと的確に反映されるのではないか。