放射能汚染 ほんとうの影響を考える: フクシマとチェルノブイリから何を学ぶか (DOJIN選書)福島第一原発の周辺住民3373人を対象に行われた福島県の内部被曝の線量検査の結果、最大の被曝量は生涯にわたって3mSv未満が2人だけで、大部分は1mSv未満だという結果が出た。チェルノブイリを現地調査した高田純氏もいうように、今回の事故による被曝線量はチェルノブイリとは比較にならないほど低く、健康に影響はない。チェルノブイリ事故について放射線医学の専門家が調べた本書の結論も同じだ。
  1. チェルノブイリ事故の結果、増えた病気は子供の甲状腺癌だけだった。
  2. これは周辺で出荷された牛乳に沃素131が混じっていることを旧ソ連政府が警告しなかったのが原因である。ソ連の出荷制限基準は3700Bq/kgであり、日本の基準は300Bq/kgなので、日本では同じことは起こらないだろう。
  3. チェルノブイリ事故のあと、周辺では18歳以下の6848人が甲状腺癌と診断されたが、死者は15人。99.8%は治癒した。
  4. 先天性奇形も、明らかな増加はなかった。
  5. チェルノブイリ事故の最大の被害は、放射能の不安や長期にわたる避難のストレスによる精神疾患である。特に幼児には思春期までトラウマが残り、知能の低下や適応障害が増えた。
政府が過剰な安全基準を設定してマスコミが騒ぐため、被災者が精神的に不安定になることが原発事故の最大の被害である。これは他の事故でも共通に指摘される現象であり、被災者を長期にわたって避難させることは好ましくない。福島で今まで観察されている線量は健康に影響の及ぶレベルではないので、除染もほとんど必要ない。政府は早急に安全基準を決めて、被災者をなるべく早く帰宅させるべきだ。

ただ、こういう科学的に正しい事実をのべることは、政治的に正しくない。反原発派から「人命軽視だ」などと攻撃されることを恐れて、専門家も事実を語らない。きょうも自民党の総合エネルギー政策特命委員会で、多くの議員から「私の考えは池田さんと同じだが、選挙区ではいえない。ぜひ客観的真実を語ってください」と妙な励ましを受けた。

このように専門家の認識と世間の認識の間に大きなギャップがあることが、原子力の問題をややこしくしている。このギャップを是正するためにエネルギー問題についての研究をサーベイし、正しい科学的知識を広めるための政策シンクタンクを、ビル・ゲイツと共同で設立する予定だ。ご協力いただける方は、右上の連絡先までぜひご連絡ください。