コメントで教えてもらったが、財政破綻について国会で今月ちょっとおもしろい質問があった。城内実議員の質問主意書は、いいところを突いている。日本をギリシャと比較して財政破綻のリスクを警告した国家戦略室の財政運営戦略を彼はこう批判する:
日銀が市場から国債を買うことにより、事実上政府の財政赤字を日銀が引き受けるのと同等の効果を生じさせることができる。実際、アメリカ連邦準備銀行(FRB)は約一.三兆ドルの米国債を購入し、米国政府の財政赤字を事実上引き受けた。日本政府がこのような方法を許すのであれば、日本の財政破綻は起こりえないと考えるが見解如何。
これは専門家の中でも意見のわかれるところで、政府答弁書も正面から答えていない。たしかにFRBは大量に米国債を買ったが、今のところインフレは起こっていない。だから日本でも、国債が市中で消化できなくなった場合には、日銀が引き受ければ問題は起こらないという推論は、一つの可能性としては成り立つだろう。

しかしインフレは貨幣的現象だが、ハイパーインフレ(*)は財政的現象なので、資金需要が少なくても政府への信頼が失われると起こる。アメリカの政府債務は、悪化したとはいってもGDP比100%。これに対して日本はその2倍だ。政府の支払い能力の担保は今後の増税と歳出削減だが、日本政府はその実行力にも疑問がある。PIIGSの通貨安はユーロに吸収されたが、円の場合は暴落によって輸入インフレが起こるおそれが強い。

政府債務の最終的な担保は、その国の経済力である。欧州でギリシャが最初にアタックを受けたのも、社会主義政権で経済の実態がボロボロだったからだ。「日本はギリシャと比較にならない」と胸を張る向きもあるが、主要国で最低の成長率で世界最速の高齢化が進行し、政治のレベルもギリシャといい勝負だろう。

アタリも指摘するように、財政危機がハイパーインフレによる実質的な債務不履行で「解決」するのはありふれた現象で、日本でも終戦直後に起こったし、70年代にも物価が5年で2倍になった。何も起こらない確率はゼロではないが、起こった場合の社会的コストは莫大なので、放漫財政を続けるのはきわめて危険な賭けである。城内氏は、こうも質問している:
IMFは、外国から借金をしている国において借金の返済が不能になっている場合に、自国通貨を発行させ、それをドルや円などの国際通貨と交換することにより返済を助けている。日本は外貨を十分持っており、IMFへの出資金も世界第二位である。
このように「日本は世界最大の対外純債権国だからIMFが介入することはありえない」というのは「日本は大丈夫」派によくある話だが、間違いである。『日本経済「余命3年」』で土居丈朗氏も説明しているように、民間の債権で政府債務を返済することはできないので、両者は別問題。外貨準備も数百兆円の国債を買い支える原資にはならない。IMFは日本に対しても毎年、資金援助の条件となる調査をしており、日本が要請したら援助を行なうことができる。

むしろ問題は、これを「財政自主権を失う」などと書いた財政運営戦略にある。まるでIMFが日本を支配するような書き方だが、IMFはGHQじゃない。当事国の要請なしに援助することはないし、議会の承認なしに政策を実行することもない。むしろIMFの介入によって思い切った財政再建や民間企業のリストラが行なわれ、奇蹟的に復活した韓国のようになる可能性も大きい。たぶん、それが日本経済の立ち直れる唯一のシナリオだろう。

ただし日本の場合は、必要な援助額が桁はずれに大きく、政治的な抵抗も強いと予想される。これを克服できるかどうかが究極の問題で、そのシナリオについては今週の「もしフリ」を・・・

(*)ハイパーインフレを「年間13000%以上」と定義して「数十倍ならハイパーではない」という人がいるが、これはCaganの論文に書かれただけで、公式の定義があるわけではない。ここではコントロール不可能なインフレの意味で使っている。