ツイッターでややこしい質問があったので、ここで説明しておく(リフレを信じてない人は読む必要はない)。

私が何度も説明したようにマネタリーベースと物価に相関はない。これは高橋洋一氏も認め、ニコ生のときは「福井さんがもう少し長くやっていれば・・・」などと言い訳していたが、今度は各国比較を出して、「世界各国の通貨量増減率と物価上昇率の関係をみると、相関係数は0.7程度とかなり相関がある(図4参照)」と書いている。

この図4は出所も国名も書かれておらず、「通貨量」とはマネーストックなのかマネタリーベースなのかわからないが、前者だと思われる。通貨統計でマネタリーベースが問題になることはまずなく、日本の場合は無相関なので飛び離れた値になるはずだからである。マネーストックと物価に(弱い)相関があることは、貨幣数量方程式として知られている。

MV=PY ・・・(1)

ここでMはマネーストック、Vは流通速度、Pは物価、YはGDPである。これは恒等式なので、Yを所与とすれば、Vが安定している場合には

M=P ・・・(2)

という関係が近似的に成り立つことがある。つまり物価がマネーストックで決まるという関係がある。しかし2000年代の日本では、図のように(2)式のような関係は見られず、むしろマネーストックと物価の変化は逆相関しているようにも見える。

boj0122

マネーストックと消費者物価の変化率(対前年同月比、%)

この原因は、ゼロ金利状態で資金需要が飽和したため、通貨供給が増えても資金需要が増えない「デフレの罠」に入ったためと考えられる。つまり(1)式で貨幣のマネーストック(M)が増えても流通速度(V)がそれを相殺するように減るため、結果として(2)が成り立たないのだ。しかもこれはマネーストックと物価の相関であり、何度も紹介したように(日銀の供給する)マネタリーベースと物価にはまったく相関がない。

数学科出身の高橋氏が、まさかこんな初歩的な統計を理解していないはずがないのに、「一般物価は中央銀行の出す通貨量で決まる」などという事実誤認を繰り返し表明するのは、モリタクと同じく政治的な意図によるデマゴギーといわざるをえない。老婆心ながら言っておくと、複数の元上司や元同僚から「高橋は昔は優秀だったのに、最近はおかしくなった」という嘆きを聞かされたが、私も元同僚として残念に思う。