まねきTV(ロケフリ)に続いて、最高裁はロクラクについても知財高裁の判決をくつがえして違法判決を出した。このように立て続けに同じ趣旨の判決が出たことは、インターネットにもカラオケ法理を適用するという最高裁の明確な意志の表明だろう。

カラオケ法理のもとになったのは、カラオケ機器を設置しているスナックから料金を徴収するために、著作権を侵害している主体は機材を置いている店だと認定した1988年の最高裁判決である。これは歌っている人を同定することが困難なカラオケの特殊性によるものだったが、その後インターネット上の情報配信にも適用され、ファイルローグやWinMXなどのP2Pサービス業者もすべて侵害の「主体」として違法とされた。


今回のまねきTVとロクラクの判決は、カラオケ法理をテレビのネット配信に適用するものだ。ロクラクは図のようにテレビを分岐して録画する市販の機材で、この図で「リビング」となっている部分を、ロクラクのメーカー(日本デジタル家電)が代行しているだけだ。しかし最高裁はまねきTV判決で、
自動公衆送信が,当該装置に入力される情報を受信者からの求めに応じ自動的に送信する機能を有する装置の使用を前提としていることに鑑みると,その主体は,当該装置が受信者からの求めに応じ情報を自動的に送信することができる状態を作り出す行為を行う者と解するのが相当
と明記している。たしかに「自動」公衆送信の場合には、利用者がスイッチを押せば自動的に送信されるので、その自動化を行なった業者が「主体」だという解釈はわからなくもない。しかしこう解すると、アゴラにも書いたように、ほとんどすべてのサーバやルータの設置者は著作権侵害の「主体」になってしまうのだ。

たとえば上の図で、「リビング」の部分にマンションの共同受信施設を入れると、これも自動公衆送信になる。そして最高裁判決は侵害の対象をテレビ番組に限定していないので、すべてのデジタル配信が訴訟の対象になりうる。上の図で「リビング」の部分にウェブホスティングのサーバを入れれば、それを使ってユーザーが著作権を侵害した場合、ホスティング業者も違法になる可能性がある。

ISPはプロバイダー責任制限法で免責されるが、これはウェブサイトで本当に公衆送信した場合だ。今回のような1対1の「公衆」通信は含まれていないので、P2Pサイトだけではなく、すべてのホスティング業者が訴えられるリスクがある。訴える側としては、個人より企業を訴えた方が多額の賠償が取れるので、大量に違法ダウンロードしているユーザーのホスティング業者を訴えるだろう。

この場合、ホスティング業者を「プロバイダー」とみれば免責されるが、「まねきTV型」とみなされれば違法になる。しかし困ったことに、どちらもインターネットでは同じなのだ。これはサーバ=クライアントというごく普通の構造で、Google AppsとまねきTVには本質的な違いがない。Googleのサーバを使って違法コピーをしているユーザーは無数にいるから、今後は権利者はGoogleの日本法人を訴えることができるようになる。

「自動的に送信する設備をつくった業者が送信の主体だ」というのは、すべてが自動化された20世紀以前の論理だ。これによれば、自動的に走る車で起きた交通事故の主体は自動車メーカーだということになる。主体という概念は近代社会の生み出した幻想だと指摘したのはフーコーだが、今回の最高裁のシュールな判決は、それを裏書きしているようにも見える。