LIVE講義 北朝鮮入門昔、北朝鮮で撮影した映像を編集したことがある。公園でなぜか家族がそろって昼食を取っているわざとらしい場面で、インタビューすると「偉大なる首領様と親愛なる将軍様のおかげで、このような豊かな食事をしています」と話し始める。首領は金日成、将軍は金正日のことだ。すべての人の話に「偉大なる首領様と親愛なる将軍様」が繰り返し出てくるので、翻訳原稿には丸で囲んで「首」と書かれていた。

北朝鮮という国が狂っていることは誰でも知っているが、本書を読むとその崩壊は時間の問題だという感が強い。特に昨年、行なわれたデノミの結果、数十倍のインフレが起こり、大量に餓死者が出たといわれる。子供の3割は栄養失調で、道に落ちたトウモロコシの粒を拾って暮らしている人がいる。他方で核ミサイルには巨費を投じ、テロ国家に輸出している。麻薬や偽札が政権の資金源になっている。

こんな国を中国が擁護するのは、北朝鮮が崩壊したら何百万人もの難民が押し寄せることを恐れているからだ、と本書はいう。中朝国境には200万人の朝鮮族がおり、彼らが難民と合流して独立運動を始めたら大変なことになる。韓国も、今では「祖国統一」を求めていない。共産圏の優等生だった東ドイツでさえ、東西統合から20年たっても共産主義の傷が癒えないのに、大部分の国民が飢餓線上にあるような北朝鮮と統一したら、韓国はめちゃくちゃになるだろう。

こうした問題は、日本とも無縁ではない。何百万人も難民が出た場合、一部を日本が受け入れるよう求められる可能性もある。政権継承の時には、ラングーン事件や大韓航空事件のように冒険的な軍事行動を取ることが多いので、これからが要注意である。北朝鮮は200発以上のノドン・ミサイルを南に向けていつでも発射できる状態にしており、発射すれば10分で日本に届く。延坪島の砲撃事件から官邸が警戒体制をとるまでに70分もかかる民主党政権では、東京がいつ火の海になってもおかしくない。