
特に90年代以降の日本の長期停滞を考える場合、イノベーションでそれを解決するというのは絵空事だろう。成長理論でいうイノベーションは、生産可能フロンティア上で生産しているとき、そのフロンティアをさらに上げることだが、ワイルもいうように、経済がフロンティア上にあることはまれだ。途上国の問題は、さまざまな制約によってフロンティアからはるかに下の状態にあることなので、それを改善するには通常の成長理論は役に立たない。
日本も「途上国化」しつつある。本書はそれをグローバル企業の競争力強化で解決しろというが、これは無理だ。グローバルな製造業の競争力はすでに十分強い。生産性本部の統計によれば、主要産業の労働生産性の対米国水準比は
新古典派的に考えると、限界生産性の低いサービス業から高い製造業へ労働人口が移動して生産性が均等化するはずだが、現実には逆に生産性の高い製造業の雇用が減り、サービス業の雇用が増えている。これは日本だけでなく先進国で共通にみられる現象で、これをどう説明するかは重要な問題である。
一つの仮説は、両者は別の市場で競争していると考えることだろう。トヨタやパナソニックはグローバルな市場で闘っており、今でも中国に比べれば(単位労働コストでみた)生産性は低いので、労働移動は中国に向かう。他方、飲食業は国内だけで競争しているので、生産性をそれほど上げなくても利潤が出る。したがって製造業で吸収できなくなった雇用をサービス業が吸収しているわけだ。
だからまず必要なのは、本書の提言とは逆に、非効率な「内需型産業」を温存している参入障壁を取り除いて国内・国外との競争にさらし、雇用規制を緩和して労働移動を促進することだろう。たとえば医療・福祉・教育・法律などの分野は、免許に守られた非効率なサービスがまかり通っているが、職業免許を撤廃して資格認定にすることも重要な制度的イノベーションである。
・・・というわけで、本書のタイトルは魅力的だが、内容は的はずれである(この記事の内容は本書とほとんど関係ない)。
- 製造業:73.9%
- 電気ガス:55.0%
- 運輸:52.3%
- 卸小売:44.1%
- 飲食宿泊:37.4%
新古典派的に考えると、限界生産性の低いサービス業から高い製造業へ労働人口が移動して生産性が均等化するはずだが、現実には逆に生産性の高い製造業の雇用が減り、サービス業の雇用が増えている。これは日本だけでなく先進国で共通にみられる現象で、これをどう説明するかは重要な問題である。
一つの仮説は、両者は別の市場で競争していると考えることだろう。トヨタやパナソニックはグローバルな市場で闘っており、今でも中国に比べれば(単位労働コストでみた)生産性は低いので、労働移動は中国に向かう。他方、飲食業は国内だけで競争しているので、生産性をそれほど上げなくても利潤が出る。したがって製造業で吸収できなくなった雇用をサービス業が吸収しているわけだ。
だからまず必要なのは、本書の提言とは逆に、非効率な「内需型産業」を温存している参入障壁を取り除いて国内・国外との競争にさらし、雇用規制を緩和して労働移動を促進することだろう。たとえば医療・福祉・教育・法律などの分野は、免許に守られた非効率なサービスがまかり通っているが、職業免許を撤廃して資格認定にすることも重要な制度的イノベーションである。
・・・というわけで、本書のタイトルは魅力的だが、内容は的はずれである(この記事の内容は本書とほとんど関係ない)。
競争や規制云々は当然あるとして、それ以外には
・従事者の所得水準の差
・数字に表れないサービスの質の違い
・ベースとなる他業種の生産性の差が、乗数効果的に効いている
こんな感じでしょうか。
もしかして、アメリカの一人前は日本の3倍の量で同じ値段、なんてことはないでしょうか。カロリーベース自給率がまかり通る日本ですから、それくらいの試算になっていても不思議では無いように思います。