Macrowikinomics: Rebooting Business and the Worldウィキノミクスの続編。前著では企業レベルのイノベーションを紹介していたが、本書では経済全体の変化を扱う、と書いてあるが、中身は続編という感じだ。ウェブを通じたコラボレーションが新たな価値を生む例をいろいろあげたもので、「ネットベンチャー・カタログ」としては便利だが、それ以上深いことが書いてあるわけではない。サポート用ウェブサイトもある。

企業やNPOやメディアをソーシャルメディアに組み込むことでアクセスが増え、その活動の質も上がるというのは確かだが、問題は本書の最後に書いてあるように、それがビジネスとして成り立つのかということだ。残念ながら、本書にも確たる見通しはない。明らかなのは既存メディアが没落することだけで、ソーシャルメディアが既存メディアを上回る産業規模になることは考えにくい。

利潤を生み出すのはコンテンツではなく、それを利用するグーグルのようなプラットフォームやiPadのようなハードウェアだろう。コンテンツは独自の個性で差別化できる個人メディアが生産し、それをマネタイズするエンジンは規模の利益をもつグローバル企業という分業になるのかもしれない。しかし新しいプラットフォームの収益力はまだ弱く、ネットメディアが自立するのはむずかしい。

これから必要なのは、昔ながらのシェア基準でヤフーとグーグルの提携を規制することではなく、検索エンジンを超える効率的な収益プラットフォームを創造することだろう。コンピュータやインターネットのような汎用技術は、生まれてから生産性を高めるまでに30年以上かかる。本書もいうように、本当の変化はこれから起こるのだろう。