きのうNHKの「ニュースウォッチ9」で、ルワンダがITインフラを整備しているという話が出ていた。こういうのは途上国にはよくある話で、日本で明治維新のころに官営工場をつくったのと同じだ。それを孫正義氏がほめていたので、私がツイッターで、「日本は途上国じゃない」とコメントしたら、山のようなRTがついた。

孫氏が自分を坂本龍馬と重ね合わせて「富国強兵」をめざす気持ちはわからなくもないが、日本はルワンダとは逆の衰退国なのだ。図は先週のEconomist誌のものだが、日本の生産年齢人口は1995年の8700万人をピークにして毎年0.5%ずつ減っている。これは資本蓄積をほぼ相殺するので、今後の日本の潜在成長率は生産性上昇率とほぼ等しくなるが、その労働生産性上昇率が主要国で最低だから、今後はゼロ成長に近い状態が続くだろう。

ただ一人あたりGDPでみると、労働人口が減ることによって資本/労働比率が上がるので、マイナスにはならないだろう。つまり日本は遠からず「経済大国」の座をおりるが、「小さくても快適な国」として生きる道があるのだ。こういう国にとって大事なのは、資源を消費して経済を拡大する「成長戦略」ではなく、減ってゆく資源を効率的に使い、負担を社会全体に均等化する維持可能性である。

「FTTHは今は何に使うかわからないが、5年後には必要になる」という孫氏の発想は、高度成長期の発想だ。すべてのビジネスが今までの延長上で拡大するとは限らない。無線の市場は拡大しているが、固定インフラは頭打ちだ。必要なのは、離島や山間部まで国策会社がインフラを建設することではなく、費用対効果を最適化し、投資を大事な部分に集中する戦略である。

しかし退却戦はむずかしい。何を捨てるかの決断が必要だからだ。90年代以降の日本は、農業のような明白に不要な産業さえ捨てる決断ができず、あらゆる部門で少しずつ退却を続けてきた結果、戦線が伸びきって兵站が追いつかず、財政破綻で全滅の危機に瀕している。民主党の団塊オヤジが高度成長の夢を捨て切れないのはしょうがないが、孫氏のような起業家まで途上国のような国家資本主義を主張するのは困ったものだ。どっちみち実現しないので、大した害はないが・・・