きょうNYタイムズのファクラー東京支局長の取材を受けた。「世代間格差」については何度も書き、先月はUstreamでも議論したが、日本のメディアはこの問題を黙殺している。初めて取材に来たのが海外のメディアだというのは皮肉なものだ。

「日本の世代間分配は異常に不公平になっているのに、なぜ政治問題にならないのか?」と質問されたので、「そういう問題は存在しないことになっているからだ」と答えるしかなかった。厚労省の公式見解では「100年安心」で、年金が破綻するなんて嘘だということになっている。たとえば2005年の経済財政白書に出た次の「世代会計」の説明では、60歳以上は5700万円の受益超過、将来世代は4200万円の負担超過だが、この図は2006年以降は消されてしまった。

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これは雇用問題とも表裏一体だ。中高年の雇用を守るために新卒の採用を減らしたおかげで、大卒の就職内定率は6割を切った。「政府は何も対策をとらないのか?」ときかれたので、「むしろ世代間の不公平を拡大する政策をとっている」と答えた。来年度予算でも社会保障の「自然増」は聖域とされ、高齢者医療費は増額される一方、派遣労働者や契約社員は規制強化で職を失う。

このような状況を「若肉老食」と呼ぶそうだが、まさに団塊世代が下の世代を食いつぶしてゆくわけだ。しかしこの「不都合な真実」を与野党もマスコミも無視している。60代以上とゼロ歳児で生涯収入が1億円も違う格差は、まともに是正しようとすると、年金制度も税制もひっくり返ってしまうからだ。「これだけ若年失業率が高いのに若者がおとなしいのは不思議だ」とファクラー記者は言ったが、若者は引きこもって消費せず、経済を停滞させることによって老人に復讐しているのかもしれない。